遊水地がなくなる! 濁流が下流域を直撃
最大の原因
下流域を洪水から守ってきた海老川上流地区
降った雨や、豪雨で溢れた川の水が一時的に滞留し、流域を洪水から守る土地を遊水地と言います。
海老川はたくさんの川が集まって1本の川になり、河口に注ぎますが、海老川上流地区はその中間に位置し、長い年月、遊水地として機能してきました。
海老川下流の排水能力が低く(※1)、洪水対策の要「海老川調節池」もない状態で、今までなんとかギリギリ溢れずにすんできたのは、そのおかげだったのです。
現在の計画はその広大な土地(42.3ha)に大量の盛り土をし、コンクリートで固め、駅やマンションなどの箱ものをつくるというもの。すると何が起きるのか。数々の研究が示す結果は以下です。
●遊水地という逃げ場を失った水は、ストレートに川を流れ下る。
●水量が増える。
●勢いがつくので、下流に到達する時間が早くなる。
また豪雨でなくても、
●少量の雨でも溢れやすくなる。
これでは何のために今まで治水工事を行ってきたのか、わかりません。
このような、下流域を洪水の危険にさらす今の計画は白紙にもどし、下流域に悪影響を及ぼさない計画に改めるべきです。
被災者が出たら、人災と言われても仕方がありません。市はどのように責任をとるのでしょうか。
ちなみに2016年(平成28年)3月に千葉県が策定したマスタープラン「船橋都市計画 都市計画区域の整備、開発および保全の方針」でも、災害防止の観点から、
「海老川沿いの水田は、これらの区域が市街化した場合、溢水や湛水の災害発生が予想され、かつ、下流の既成市街地への影響も著しいものがある。
これらの区域については、広域河川改修事業等の治水対策と調整を図りつつ計画的な開発以外、極力保全に努める」
とし、海老川上流地区の市街化は避けるべきとしています。
※ 海老川下流の排水能力は、1時間30ミリの雨量を安全に流下させる程度。昭和51年の県・河川整備計画の目標値で、海老川下流はいち早くこの数値で整備されました。しかし1時間100ミリの雨が降る時代、この程度の排水能力ではとても洪水は防げません。
埼玉県「見沼田んぼ」に見る、下流域を守る政策
長い間、水田として維持されてきた見沼たんぼですが、1950年代に入り、高度経済成長期をむかえると、東京都市圏の拡大に合わせて開発の圧力が高くなり、一部で住宅建設や学校・道路など公共施設への土地利用の転換が行われるようになりました。
ちょうどその時期にあたる昭和33年(1958年)9月、 狩野川台風が関東地方を襲いました。
この台風により、芝川下流域の川口市市街地が浸水するという大きな被害が発生しましたが、この時、見沼たんぼが自然の貯水池となって水を受け止めたため、下流の被害を抑えることができました。
このことで、見沼たんぼの遊水機能が注目され、昭和40年(1965年)には、宅地化は原則として認めないとする「見沼三原則」が制定され、主に治水上の観点から開発抑制策が講じられるようになりました。
◆さいたま市「見沼田んぼのホームページ」より