現在市は、三井共同コンサルティングに委託して、海老川上流地区土地区画整理事業(通称メディカルタウン構想)の治水面での安全性の検証を行っています。けれどもその中身ははっきりしません。私たちは、その検証が市民の疑問や不安に具体的に応えるものとなるように、市長に請願書を提出しました。
市民が知りたいのは、「この事業で洪水は本当に起きないのか。その根拠は何か」ということです。けれども後述するように、これまでの市の答弁ではまったくそれが期待できません。このため私たちは、市が洪水を防ぐとして計画している工事の根拠を示すこと、また、より現実的な状況を想定したシミュレーション(たとえば降雨量を4段階に分けて検証)を行うことなどを求めました。
なぜ今になって、安全性の検証をしているのか
ここでもう一度、なぜ工事着工直前の今になって市が安全性の検証を行っているのか、おさらいしたいと思います。
通称メディカルタウン構想は、昨年7月に市の都市計画審議会で採択された後(ただし治水に対する審議は無し)、今年1月18日に県の都市計画審議会に諮られました。この場で、この事業計画が治水上の安全性を科学的に検証していないことが厳しく指摘されました。このため市は現在、急いで安全性の検証を行っているのです。
県の審議会で特に問題とされたのが、今まで周囲の河川や土地からメディカルタウンの予定地に流れ込んでいた水(遊水と呼ばれます)はどのくらいか、そしてそれはタウン建設後にどこに行くのか、という問題。市はその検証は行っていないと答弁し、現在の計画にこの遊水量の問題がまったく考慮されていないことが明らかになりました。(県の都市計画審議会の議事録はこちら >>)
安全性の検証とは形ばかり
メディカルタウン予定地に大量の水が溜まって遊水地の役割を果たしていたことは、県の調査でもはっきりしています。つまりそのおかげで、排水能力の低い海老川の下流でも溢れずにすんでいたわけです。ですからこの遊水地を潰してしまうことで行き場を失う大量の水をどのようにコントロールするのかは大問題となるはずです。当然、事業計画の大幅な修正を求めるものになるでしょう。
けれども市は、現在行われている市議会で元の計画に基づいた予算案を提出しており、不十分な検証に基づいた計画を変える気はないことがわかります。つまり市が現在行っているという安全性の検証は形だけで、「安全なので計画の変更は必要なし」という結論にしようとする意図が見えるのです。
市議会でも複数の議員から「どのような検証をしているのか」という質問が出されました。これに対して都市政策課は以下のように答弁しています。
●年超過確率1/1000の降雨の際(9時間516ミリ)、海老川流域の浸水想定区域が土地区画整理事業で実施する調整池、河川工事、盛り土によってどのような影響を受けるかシュミレーションする。
●県が作成した計画規模の降雨(年超過確率1/50。海老川水系の場合、9時間221ミリ)による浸水想定区域図についてもシュミレーションする。
これを聞いて内容がわかる人はほとんどいないと思われますが、いかがですか? 検証結果が出ても、このような言葉で安全性を語られてもさっぱりわかりません。降雨の想定や条件設定が適切なのかも判断に苦しみます。私たちが知りたいのは、これから頻繁に起きると思われる大雨に対して、メディカルタウン建設がどう影響するのかを具体的に示す数字なのです。ですから降雨量を4段階に分け、工事前と工事後の比較、海老川調節池が完成している場合としていない場合、そして満潮時であること、などの条件を与えて海老川の水位や浸水区域を示してほしいと請願したのです。
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これまで私たちが出した請願書に対して、市はいまだに誠意ある回答をしていませんが、より実効性がある検証にしてもらうために、この請願書に対しても回答を求めていきます。
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