海老川水系の未来を考えるセミナーを開催!
- ryuikichisui
- 11月11日
- 読了時間: 6分
更新日:11月12日

晴天に恵まれた11月8日(土)、会場の船橋商工会議所には約60人の市民が集まりました。海老川水系から遠く離れた市の北部や、他市から参加された方たちもいてびっくりしました。
第1部は海老川水系の成り立ちから、海老川はどんな川か、高度経済成長時代を経て、私たちの暮らしがどう変わってきたかを振り返ったあと、今メディカルタウン構想と新湾岸道路計画という新たな問題に直面していることをお伝えしました。まるで高度経済成長時代をなぞるかのような開発優先のメディカルタウン構想は、当時と同じく、洪水を引き起こす開発です。
また生物多様性の面から見ても海老川水系は守らなければならない場所。特に海老川上流地区(湿地)や三番瀬(干潟)は多種多様な生き物がすむ生物多様性の宝庫。ラムサール条約に見るように、湿地や干潟を守ろうというのが世界の潮流ですが、その流れに逆行しているのがメディカタウン構想だということを指摘しました。
第1部の最後には、約30年前に松戸市と市民が一緒に行った多自然川づくりを紹介しました。とてもいい話で、私たちの参考になります。この記事の最後をご覧ください。

ヘイケボタルが明滅する幻想的な動画とナレーションで始まった第2部では、船橋ほたる観察会の安斎司さん、都市鳥研究会の越川重治さん、三番瀬を守る会の田原悦子さんが、海老川水系の生き物の観察記録や多種多様な生き物たちの紹介、なぜ守りたいのか、守らなければならないのかを語ってくださいました。
<船橋ほたる観察会 安斎司さん>

船橋には水が動かない湿地にすむヘイケボタルしかいない。もういないと思われていた蛍を里山で見て感動し、以来毎年6月から9月まで夜間観測を続けている。生息地すべて(5流域)を回るので19時半頃~23時過ぎまでかかる。帰ると夜中にデータの整理。
蛍の数のピークは流域によって違う。理由は不明。また温暖化の影響か、ピークは年々早まっている。全体として蛍の数は減っている。だから芝山高校と一緒に人工飼育を試みている。またDNA分析も始めている。

蛍のいる里山は魅力的。水や風の音、虫やカエルの合唱、フクロウの声が聞こえたり、狸に出会うことも。満月の夜は水面で月がキラキラ輝く・・・。
メディカルタウンの工事が始まり、海老川流域の湿地が埋め立てられて生息地が潰されている。
でもいつか、船橋をヘイケボタルが飛び交う街にしたい。そう夢見て活動している。
<都市鳥研究会 越川重治さん>

越川さんは船橋市などで教鞭をとった元高校教師(生物)。生き物を見つける嗅覚は超人的で、パッと草むらにひそむ生き物を見つけます。
そんな越川さんなので、「消息不明絶滅種」の鳥が草むらに隠れるようにいるのを素早く見つけて写真を撮ることができます。道路脇に残された足跡を見ても「野兎ですね」と即答。海老川に鮎が上ってきているのを見た時には、「おそらく海老川の中に湧き水があるのでしょう」と。
越川さんは誰よりも海老川水系の豊かな生態系を熟知し、同時にその消滅を危惧していることが、その話からわかりました。印象に残ったのは、かつて餌をとるために三番瀬に群れていたカワウの大群が消えてしまった話。「人間が潮干狩りができるように海を網で覆っちゃったんですよ。そのためにカワウは餌が食べられなくなってしまった」
声をつまらせる越川さんに、自分たちのことしか考えない人間に気づかされました。
<三番瀬を守る会 田原悦子>

三番瀬を守る会の会長の田久保晴孝氏は学生時代から50年以上三番瀬を守るための活動をしている、と田原さん。そういう田原さんも30年以上。
三番瀬は、太陽光が十分に届き、また海老川からの真水が流れ込んで地下水が沸く場所もある。動物は干潟の砂につく有機物やプランクトンを食べ、植物は二酸化炭素を吸収して酸素を供給し、海水も浄化する。世界では地球上でも特に生態系が豊かである湿地や干潟を守ろうという動きが広がっている。
しかし東京湾の干潟は高度経済成長期にその9割が埋め立てられ、三番瀬の面積も半分に。でも第2湾岸道路を通すために計画された二度目の埋め立て計画は、近隣の市民たちと力を合わせて止めた。それなのに今また新湾岸道路計画が持ち上がり、生態系が脅かされそうになっている。
一方海老川の上流でもメディカルタウン構想が進められている。三番瀬は海老川が運んでくる陸の栄養分で養われている。上流の市街化は三番瀬を貧しくさせる。メディカタウン構想は高度成長期に海を埋め立てたのと同じ発想。一部の人に一時的な利益をもたらすが、将来的にすべての住民と自然環境に不利益をもたらす。

そうでなくても、今三番瀬(と東京湾)は青潮に襲われ、酸欠で大量の魚や貝が死んでいる。また海水温の上昇で海苔などの藻類も育たない。餌が無くなり鳥の数も減っている。海は今、瀕死の状態にある。そのうえ開発はいらない。
多様な生態系を育む「干潟は地球の宝物」
気候変動をまともに受けている干潟。人間がさらに自然環境を悪化させる事態は避けなければならない」
「三番瀬は海老川とのつながりで成り立っている場所。起こる問題もひとつながり。上流の開発でこれ以上問題を増やしてはいけない」
田原さんの言葉が胸に響きました。

何十年も地道に保護活動を続けている皆さんの言葉は重いです。そしてこうした方たちの努力やデータを、市が環境政策に生かしていないことを歯がゆく思いました。
第3部では、5~8人のグループに分かれてディスカッション。
私たちに何ができるのか。このセミナーが考える機会になったのなら幸いです。

◆コラム◆ 松戸市・国分(こくぶ)川の多自然川づくりについて ◆
私達「流域治水の会 船橋」は、行政と市民が協力して、水害のない緑豊かな町をつくることを目指しています。それは国が進める水防理念「流域治水」の基本理念の一つでもあります。
そのため今回のセミナーでは、約30年前、市と市民が協力して洪水をなくすために動いた国分川の事例を紹介しました。今後私たちに何ができるか、考える上で参考になると思ったからです。
当時、松戸市河川清流課には非常に優れたリーダーがいたようで、「ワークショップ」という手法で市民を巻き込みながら、川づくりを進めました。その川づくりはコンクリートの直立護岸を壊し、土手のある緩やかな傾斜の川につくり替えること。広い川幅で洪水を防ぐだけでなく、土手や川底にはたくさんの生き物がすみ、人が川辺に下りて水に親しむことができます。
こうした川づくりを多自然型川づくりと呼び(現在は多自然川づくりという名で定義し直されています)、国が積極的に進めています。千葉県では準用河川以上で採用することになっており、船橋市では印旛沼流域の木戸川で、見事な多自然川づくりを見ることができます。藤代市長時代に何回もアンケートを取って住民の希望を聞き、完成後は近隣住民が「木戸川の環境を守る市民の会」を作って、川を美しく保つ努力をしています。
船橋全体で国分川や木戸川に見るような、官民協働の川づくり、できれば多自然川づくりが行われることを願っています。
なお松戸市の事例は完成後長い時間が経過したため、記録がありませんでした。しかし「流域治水の会 船橋」のメンバーが各所に足を運んで資料を発掘し、まとめたことを付記します。松戸市と松戸市民の素晴らしい体験を船橋に知らせるために…。




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