5/13に提出した私たちの要望書に対する市長の回答から読み取れること、また私たちの感想をまとめました。
要望1「洪水を起こさない、安全な計画に変えてほしい」
回答→ 現在シミュレーション中。
川そばのこれだけ広い低湿地を埋め立てる時、その土地がもっていた水を溜める能力(遊水量)が失われることの影響を調べるのは当然のことでしょう。それをせずに事業計画を立て、また県に怒られて(※)ようやく、工事開始寸前になってから安全性の検証を始めたことは、前代未聞の失態と言えるでしょう。市は真摯に反省するべきです。
しかし市長は、安全性の検証のためにシミュレーションを行っていると回答しながらも、「安全性が証明されなかった場合は、計画を見直す」とは言っていません。本音は計画を変えたくないのです(→「説明会の裏の不都合な真実」)
※1月18日の第195回千葉県都市計画審議会で、安全性の検証と市民への説明会を行っていないことが問題視され、それらを実行するよう付帯意見を付けられたこと。
要望2「住民の同意がない開発は違法です。必要な手続きを行ってください」
回答→都市計画法、土地区画整理法にのっとっており、県や国とも協議している。
これまで市は当会や議会から、いくつもの不適切な手続きを指摘されてきました。たとえば限りなく違法に近いグレーな手続きによって未完成の事業計画を縦覧(閲覧)させ、さらに市民から意見を出す機会を奪うなど。これは法の趣旨をないがしろにするものです(→「市民と都市計画を無視した区画整理の認可手続き」)。
また、「浸水被害が予想される中で事業を行うのであれば、それは流域住民の財産権の侵害にあたり、あらかじめ損失補償をする必要がある」「憲法違反ではないか」などの学識経験者の意見にも、正面から向き合うことはありませんでした。法を順守していると言いながら、都合の悪いことには答えない残念な態度です。
中核市である船橋市には都市計画について様々な決定権が与えられています。市の行ってきた様々な手続きについて、いちいち県と国と協議してきたとは思えません。だからこそ、1月の県の都市計画審議会で市の手続きや計画内容が厳しく批判され、付帯意見まで付けられたのではないでしょうか。
要望3「遊水機能を残し、浸水被害を起こさない、魅力的な町に」
回答→個人の所有地に遊水の溜まり場に代わるものを設けるよう指導するのは不適切
市長は「同地区がこれまで結果的に遊水がたまっているという状態であったとしても、個人の所有地に将来にわたって遊水を溜めるのは困難であり、遊水の溜まり場に代わるものを設けることを指導するのは不適切」と述べていますが、これは耳を疑う発言です。
なぜなら全国のほかの自治体では、遊水池の保全に行政自ら努力しているからです。
たとえば静岡市は遊水池の保全に協力してくれる人に報奨金を出しています。>>
また全国的に調節池(大雨の時に水を引き込んで川の氾濫を防ぐ治水施設 )の設置・整備が進んでいますが、その際には国や自治体が所有者から土地を買って洪水に備えています。
同じように豪雨の時に河川への水の流出を抑えるために、「田んぼダム」という施策も行われています。豪雨の時に川そばの田んぼに一時的に水を溜める手法ですが、稲が全滅する恐れがあるため、農家にとっては迷惑な話です。けれども役所の職員が一軒一軒農家を回って、「流域を水害から守るために協力を」と頭を下げているそうです。協力してくれる農家へ財政援助をする自治体も少なくありません。(掲載記事は茂原市の例です)
これらの事例からわかるように、「私有地だから」という理由で何もしないのは、市は無策と言っているのと同じです。
地球温暖化で水害が激甚化することが確実視されている時代です。船橋市は海老川水系全体を見渡して市民を守るための治水計画をつくり、たとえ私有地であっても協力を呼び掛けるべきでしょう。
この度の市長からの回答書には、これまでの市の姿勢についての反省も、地球温暖化による水害の激甚化に対する危機感も感じられませんでした。これでどうやって市民の命と財産を守るのでしょうか。その意志があるのか不安にさせる残念な内容でした。
市の回答はこちら >>
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