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市の洪水シミュレーションを検証する(2)シミュレーションの手法は適切か

更新日:2023年7月30日


2023/6/3 6am 大雨で飯山満川が溢水した海老川との合流地点

 昨年(令和4年(2022年))、メディカルタウン事業が海老川流域の治水に与える影響を調べたるために市が行ったシミュレーション。前記事「(1)疑惑の検証条件の変更」では、急遽、県の河川工事が検証条件に加えられたことをお伝えしました。今回はシミュレーションの手法に関する問題を検証します。


1. ハザードマップの比較は不適切

 シミュレーションでは、事業前と事業後のハザードマップを比較して浸水深などの変化を調べるという手法が取られました。

 けれども県の都市計画審議会で求められた調査は、「事業で失われる遊水量(その土地に溜められる水の量)はどのくらいか」ということ。ハザードマップの比較ではありません。

 京都大学名誉教授で元京都大学防災研究所所長の今本博健氏も、「必要なのは事業による海老川の流量の変化を調べること」と言っています。


 市は「国の指針に則ってシミュレーションを行った」という説明をしていますが、市が準拠したという国の指針(「洪水浸水想定区域図作成マニュアル」)はハザードマップの作成に関するもの。今回のような事業の影響を調べる時にハザードマップを比較せよなどとはどこにも書いてありません。


 またこの手法では、事業地の外の土地利用は変わらないと仮定するため、「事業後」のハザードマップが使う土地利用のデータは「事業前」のハザードマップ(令和2年発行)が用いたものと同じ、10年近く前のものになります。これでは、新駅建設を当て込んで急ピッチで進む事業地周辺の市街化を「事業後」のマップに反映できません。市街化は緑や土を減らし、川への雨水の流入量を増加させます。この進展する市街化を考慮していない「事業後の浸水深」は現実的ではありません。



2. 内水氾濫を考慮していない

 今回検証したのは、川から直接溢れる外水氾濫だけ。近年の船橋の水害のほとんどは内水氾濫であるため、それが考慮されていない検証は意味がありません。 


出典) 船橋市 洪水・内水・土砂災害ハザードマップ


 8月の結果説明会の時、なぜ内水氾濫を入れないのかと聞かれた市は、「内水氾濫を反映するには細かいデータが必要で大変なんです」と答えました。大変でも時間がかかっても正確な検証をしてもらわなければ困ります。急いでいたから省いたのだとしたらとんでもないことです。


3. 検証されたのは二級河川の浸水だけ

 今回検証されたのは、県が管理する二級河川(海老川、長津川、飯山満川)流域の浸水深のみ。本来ならば、それに市が管理する河川(北谷津川、念田川、高根川、前原川など)の流域が加えられなければなりません。近年の大雨で溢れているのは市が管理する河川流域です。これらについて検証されていないシミュレーションは不完全です。



4. 詳しい検証条件が示されていない

 通常シミュレーションでは検証方法などの詳細を記した報告書も一緒に公開され、さらに第三者委員会が、正しい条件で数値シミュレーションが行われているか、その結果の解釈に問題がないかを検討します。ところが今回は両方とも行われませんでした。事業を進めたい市がデータをいかようにも操作できる環境でシミュレーションを行ったと言われても仕方ありません。



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